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いよいよ終わりが近づいて来た……
一応、本編は35話となっております。
本編が終わりましたら、短編をいくつか用意しているので、そちらを投下させて頂きます。
これはどうでもいい話なんですが、ココロコネクト?というアニメの聖地が私の家から徒歩10分の所でした。
何枚か画像を見たら見覚えがある場所だらけで・・・
もうすぐ終わりっていうのも何か寂しいな。
もうすぐ終わりか……
寂しいけど短編含めて堪能しよう
聖地というか現実のロケーション使ったアニメがすごい増えたよな
タイアップや背景が楽とかメリットが多いからかな、自分ちの近所には一切縁が無さそうだけど
あと4話・・・だと!?
寂しいな・・・
てか、あと少しで完結って、二人の話が納まるのか・・・?
気になるけど、あと4話!待ってるぜ
それまでと同じように接することが出来る時点で凄いな。僕には真似できそうにない。
それにしてもほうたるは平常運転だなあ。ww
もうすぐか
>>320
前にテレビで見た感じだと、無から有を生み出すのは大変だからだそうだ
現実にある場所の方が時間も金もかからんらしい
制作者側のコストパフォーマンスと、視聴者側の作品に対する愛から、結果的に聖地巡礼産業が生まれたと考えられそうだ
ドラマや映画の撮影とかみたく町おこし的なイベント扱い。
逆に押し過ぎると引かれるジレンマがあるから中々難しいがな
一時期主人公たちを模したマネキンとか置いてあってさすがにこれはないだろwって思った
トレスしてたのがばれてヲタ襲来で迷惑したってとこもある。観光客相手にうまく商売してるとこもある。
いずれにしてもうまくやってくれればいいんでないかなぁ。
ひい
それでは第32話、投下致します。
える「今年一年、お疲れ様でした」
える「古典部として活動する時間も大分少なくなって来ましたが……」
える「最後まで、頑張りましょう!」
里志「いいね、やっぱりこういうのは千反田さんに任せるべきだ」
千反田のスピーチで、里志曰く「忘年会」
俺からすれば、ただの集まり……が始まる。
える「ふふ、ありがとうございます」
……思えば早かった。
里志の言葉は、概ね正しいのかもしれない。
終わってしまえば、過去の事なんてあっという間だと。
千反田との事も、考えねばならない。
何か良い、最善の策はある筈だ。
今まで何度も考えてきて、色々な問題に答えを出してきたんだ。
きっと、今回の事も考えさえすればどうにかなるだろう。
しかし、その反面……それは俺の希望なんじゃないかとも思う。
……もし、もし何も答えが出なくて、どうしようも無くなってしまったら。
せめて千反田との約束だけは果たそう。
別れる時に、悲しまないという約束だけは。
奉太郎「ん、何だ」
里志「中々に神妙な面持ちをしていたからね」
里志「まあ、無理も無いとは思うけど」
そう言う里志は苦笑いをしていた。
奉太郎「そうだな……」
里志「僕に出来る事なら手伝うからさ、何かあったら言ってね」
里志に何か出来る事……か。
そう言えば、何か忘れている気がする。
ええっと、確か……
ああ、そうだった。
千反田のチョコの謎があったのか。
里志「現場検証? 面白そうな話だね」
奉太郎「そうだな、里志や伊原にも話しておくか」
すると俺の言葉が聞こえたのか、伊原も近くに寄ってきた。
摩耶花「何? またちーちゃんの気になる事?」
奉太郎「ああ、その通りだ」
奉太郎「えっとだな……」
摩耶花「でも、その話を聞く限りだと……」
奉太郎「そうだ、千反田の母親にしか出来なかったんだ」
える「ですが、母は知らないと……」
里志「ううん、確かにそれは妙だね」
奉太郎「ああ、だから現場検証って訳だ」
そう言い、俺は立ち上がり、そのままの足でテーブルの近くに行った。
上に並んでいるのは簡単なお菓子や飲み物。
その殆どは、千反田の家に来る途中買った物だった。
その内の一つの皿を手に取り、千反田に問い掛ける。
える「え? ええっと、それはお菓子ですよ、折木さん」
奉太郎「そうだな」
それを聞き、俺はその皿をテーブルへと置き直す。
次に違う皿、これは冷蔵庫に入っていたのか少しだけ冷えていた。
その皿を持ち、千反田に再度聞く。
奉太郎「じゃあ、こっちは?」
える「あの、もしかしてお菓子の種類ですか?」
える「それならば、そちらはマドレーヌですね」
奉太郎「……そうか」
える「あ、ええっとですね……」
える「最初は、私と両親で食べようと思っていたんです」
える「ですが、皆さんが来ると聞いたので……」
奉太郎「なるほど、それで皿に移したって事だな」
える「いえ、そのお皿には元々乗せていました」
奉太郎「ああ、そうか」
一つだけ気になる事があるが……どうした物か。
奉太郎「これ、一つ貰うぞ」
える「ええ、どうぞ」
俺はその言葉を聞き、マドレーヌを一つ口に運ぶ。
える「ふふ、おいしいですか?」
奉太郎「ああ」
とにかく、これで先程の疑問は解けた。
後は、一連の事を繋げるだけなんだが……まだ足りない事もあるな。
里志「ホータロー、まさかマドレーヌが食べたかったってだけじゃないよね」
奉太郎「何だ、里志も欲しいのか」
摩耶花「ちょっと、冗談は良いけど、何が何だか分からないんだけど」
奉太郎「じゃあ、そうだな」
奉太郎「場所を変えるか」
奉太郎「千反田、そのチョコが置いてあった場所に案内してくれるか」
える「ええ、分かりました! いよいよですね」
える「では、台所にまだあると思うので、行きましょうか」
える「良かったです、まだありました」
そう言い、千反田はチョコが入っていたと思われる箱を指差す。
奉太郎「なるほど、確かに一つも残ってないな」
箱には20個程入っていたのだろう、だが中には一つも残されていない。
摩耶花「あれ、こっちの箱は?」
伊原が指差すのは、隅に置いてある箱だった。
見た目的には確かに、お菓子の箱みたいだが。
える「それは、先程のマドレーヌが入っていた箱です」
里志「なら、関係は無さそうだね」
確かに……一つ一つ見ると、関係は無いように見える。
俺は一度、考えを整理する為に廊下に出る。
台所の方からは、微かに三人の話し声が聞こえていた。
奉太郎「さてと」
廊下は冷たく、少しの風が吹き込んでいる。
しかしなんとなく、こっちの方が集中できる気がした。
奉太郎「……まず」
考えるべき事を纏めよう。
千反田のチョコを隠したのは誰なのか?
何故、そんな事をしたのか?
そしてまだ、そのチョコはあるのか?
今まで見た事を繋げれば、答えは出る筈だ。
しばし俺は、集中して考えた。
すると、すぐに三人の視線が俺の方に向いた。
奉太郎「何だ、何か顔に付いてるか」
里志「敢えて言うなら、目と鼻と口、眉毛って所かな」
摩耶花「そうじゃなくって、何か分かったの? 折木」
奉太郎「……まあ、一応はな」
える「本当ですか!」
やはり、最初に反応を見せたのは千反田であった。
里志「さすが、ではご説明願うよ」
奉太郎「ああ」
特に焦らす必要も無いし、俺はそのまま説明に入る事にする。
奉太郎「誰が千反田のチョコを隠したかって所からか」
里志「悪く言うなら、犯人って所だね」
奉太郎「そう言う事だな」
える「それで、犯人は?」
奉太郎「これはまあ……全員予想が付いているだろ」
摩耶花「って事は、ちーちゃんのお母さん?」
伊原の問いに、頷く。
奉太郎「そうだ、もし母親以外だったらそれこそオカルトになるな」
里志「はは、それも中々に面白そうだけどね」
奉太郎「俺も別に嫌いって訳じゃないが、今は省くぞ」
える「でも……何故、母はチョコを隠したのでしょうか?」
奉太郎「それは少し、長い説明になるが」
奉太郎「どこから説明するか……」
奉太郎「ああ、その前に千反田に一つ聞くことがある」
奉太郎「聞くと言うよりは、頼み事だな」
える「私にですか? 何でしょうか」
奉太郎「今日のチョコの一連の流れを再現してくれるか」
える「分かりました、では」
その言葉を聞き、里志と伊原は場所を空ける。
千反田が指したのは、簡単なテーブルと椅子がある場所。
える「それでですね、途中で電話が鳴ったので……」
奉太郎「一度、席を離れたんだったな」
える「はい、そうです」
える「それで、戻ってきた時には既に無くなっていたんです」
奉太郎「ふむ、その後確か……親に聞いた」
える「ええ、ここにあったチョコを知らないか、と言った内容の事を聞きました」
そう言い、千反田は先程見せたチョコの箱を指差す。
奉太郎「なるほど……やはりそうか」
摩耶花「え? 別におかしい所なんて無かったと思うけど」
里志「でも、聞けば聞くほど変な話だよね」
里志「千反田さんのお母さんは、千反田さんが尋ねた事に何で答えなかったのか」
里志「やっぱり、オカルト的な何かなんじゃないかな」
奉太郎「んな訳あるか」
奉太郎「いいか、まず千反田の癖について話す」
える「私の癖、ですか?」
奉太郎「そうだ」
奉太郎「さっきのマドレーヌ、元から皿に乗っていると言ったな」
里志「それは僕も聞いたけど、それがどうかしたのかい?」
奉太郎「手作りって訳じゃないんだろ? 千反田」
える「はい、そうです」
奉太郎「さっき伊原が箱を指したとき、それにマドレーヌが入っていたと言ってたしな」
奉太郎「つまり、千反田はわざわざ箱に入っていたマドレーヌを皿に移したって事だ」
奉太郎「それも、俺達が来るからでは無くて元からな」
奉太郎「違う、それだったらわざわざあんな大きな皿には乗せないだろう」
奉太郎「見た限り、丁度良さそうな皿なんていくらでもあるぞ」
里志「なるほどね、それで元から乗っていたって事が分かる訳だ」
える「で、ですがちょっと待ってください」
える「それとチョコに、どういった関係が?」
奉太郎「千反田は恐らく、そのチョコも皿に移していたんだろう」
奉太郎「それで皿に乗っていたチョコを食べていた、そこに電話が来る」
奉太郎「それで戻ってみたら……無くなっていたんだ、皿に乗っていたチョコが」
里志「……なるほどね」
える「ですが、それなら母が答えなかった理由が……」
奉太郎「この箱を指差して、言ったんだ」
摩耶花「って事は、ちーちゃんのお母さんは箱に入っている物とお皿に乗っている物を別々に捉えたって事?」
奉太郎「そうだろうな、そう考えれば答は出る」
奉太郎「千反田、冷蔵庫を開けてみろ」
える「は、はい。 分かりました」
そう言い、千反田は冷蔵庫を開く。
里志「はは、灯台下暗しって所かな」
える「どうして気付かなかったんでしょう……」
奉太郎「まあ、千反田の母親も悪気は無かっただろうさ」
摩耶花「でも、でもさ」
摩耶花「開ければすぐに気付くよね? ここなら」
奉太郎「そうとも限らんさ」
そう言い、俺は先程まで居た部屋へと足を向ける。
当の千反田は、もう気付いている様子だった。
奉太郎「これだ」
俺は皿を一つ手に取る、マドレーヌが乗った皿だ。
奉太郎「まだ分かるかもな、食べてみろ」
摩耶花「……うん」
伊原は依然、納得出来なさそうな顔をしている。
渋々、と言った感じでそれを口に運んでいた。
摩耶花「……あ、冷たい」
里志「なるほど、分かったよ」
里志「千反田さん、このマドレーヌは冷蔵庫に入ってたんじゃないんだね」
摩耶花「……私も分かったかも」
奉太郎「そう、それが入っていたのは」
奉太郎「冷凍庫だ」
里志「はは、マドレーヌやケーキは冷凍保存できるからね」
里志「それで気付かなかったんだ、冷蔵庫に入ったチョコに」
える「なるほど、確かに冷蔵庫の方は見ていませんでした」
える「やはり、母が仕舞っていたんですね……」
ま、千反田の気になる事がこれで解けたなら、めでたしと言った所だろう。
里志「じゃあ、気を取り直して……って言うのもあれだけど、忘年会の続きをしようか」
……随分と切り替えが早い奴らだな。
俺はと言うと、楽しそうにしている里志達に気付かれない様、そっと部屋を出た。
いつもの……と言うのも変か、俺の家じゃあるまいし。
縁側に座り、かなり冷たくなった風を浴びていた。
今日の問題みたいに、簡単に解決できない物かと。
変わらずにあいつと接していると言っても、やはり妙な距離感は感じてしまう。
千反田はどうか分からないが……
一度、里志にでも相談してみようか。
意外と頼りになるしな、あいつは。
伊原も頼りにはなるが……里志の方が、まあ気楽に言えると言う物だ。
後数日すれば、今年も終わる。
卒業式はいつだったか、3月だっけか。
って事は、後2ヶ月程度か?
それまでに答えは出せるのか、俺に。
北海道の方が寒かったが、こっちもこっちで寒い物は寒い。
何か暖かい飲み物でも持ってくれば良かったか……
そんな事を考えていた時、ふと後ろに気配を感じる。
姿を見ずとも、なんとなく誰かは分かった。
奉太郎「千反田か」
える「凄いですね、後ろに目でもあるのでしょうか」
奉太郎「どうだろうな、気になるか?」
える「ええ、少し」
笑いながら、千反田は俺の隣に腰を掛ける。
える「そうでしたか、本当に目があるのかと思いました」
俺の事を化け物とでも思っているのだろうか。
奉太郎「それで、何か用事だったか?」
俺がそう聞くと、千反田は手に持っていたコップを一つ俺に手渡す。
それは暖かい紅茶だった。
奉太郎「凄いな、テレパシーでもあるのか」
える「え? どういう事でしょうか……」
奉太郎「いや、何でもない」
二人並んで座り、紅茶を飲む。
……やはり俺の淹れたお茶より、こっちの方が数倍美味い気がする。
奉太郎「ん、どうした」
える「先程のチョコの件なんですが、分からない事がまだあるんです」
奉太郎「……ああ、何となく察しは付く」
奉太郎「何故、千反田の母親はそれが千反田が聞いたチョコだと分からなかったのか、だな」
える「ええ、そうです」
える「いくら私が箱を指していたと言っても、おかしくは無いでしょうか」
える「もし、私が逆の立場だったら」
える「お皿に乗っていたチョコを思い出して、これの事か聞いていたと思うんです」
奉太郎「確かに、その通りだ」
える「それなのに、何故母は言わなかったのでしょう」
奉太郎「もしかしたら、何か言わない理由があったのかもしれない」
える「言わない理由……ですか」
奉太郎「俺はお前の母親の性格とかは知らないし、考えも分からないが……」
奉太郎「何かの目的が、あったんじゃないか?」
奉太郎「それを言わない事でどうなるか、考えれば……お前になら分かるかもな」
える「それを言わない事で、何が起こるか……ですか」
える「……」
千反田は集中して考えいてる様子だった。 何もそこまで集中しなくていいだろうに。
千反田が考えている間、俺は紅茶を啜る。
える「……もしかしたら」
える「母が言わない事で起きた事、分かったかもしれません」
奉太郎「ほう」
奉太郎「それで、起きた事とは?」
える「今日の事です」
今日の事……と言われても、どれを指しているのか分からないでは無いか。
奉太郎「えっと、今日のどの事だ」
える「全部ですよ」
奉太郎「俺がした事?」
奉太郎「すまん、良く意味が分からないんだが……」
える「あ、すみません」
える「実はですね」
える「良く、母とお話しているんです」
える「折木さんの事を」
千反田は恥ずかしそうに、そう言った
第32話
おわり
乙ありがとうございました。
乙
乙
ちゃんと謎解きもあるのか…
すごいな
次も楽しみにしてるぜ~
どうなるんでしょうか。気になります。
今日は多分、18時くらいの投下となります。
土日月はちょっと投下できそうにないので、来週完結となりそうです。
それではまた後ほど、失礼します。
第33話、投下致します。
理由が無く呼び出した訳では無い、俺はそういう奴では無いから。
里志「ホータローの部屋に入ったのは随分久しぶりな気がするね」
奉太郎「そうだったか?」
里志「前に来たのは、確かホータローが風邪を引いた時だったかなぁ」
ああ、去年の話か。
奉太郎「そんな事もあったな」
奉太郎「あの時は随分な扱いをしてくれて、ありがとう」
里志は少しだけ顔を引き攣らせながら笑い、壁を背に座る。
里志「それより、今日は思い出話の為に呼んだのかい?」
奉太郎「そうだと言ったらどうするんだ」
里志「別に? ホータローにもそういう感情があるんだな、と関心するかな」
奉太郎「そうか、なら関心はされないな」
里志「はは、そうかい」
里志「それなら、本題は何かな」
恐らく分かっているだろうに、こいつも性格が悪い。
里志「お、気が効くね」
里志「なら、お茶でも貰おうかな」
奉太郎「ああ、ちょっと待ってろ」
俺はそう言い、部屋を後にする。
台所でお茶を淹れ、考える。
今日、里志を呼んだのは……千反田の事で相談したかったからだ。
だが、それだけでは解決できないのかも、と言った想いもある。
俺は……誰かに話したかったのかもしれない。
カップを二つ持ち、自分の部屋へと戻る。
奉太郎「待たせたな」
里志「ホータローが自ら動いて淹れてくれたお茶なんて、一生に一回飲めるか飲
めないかじゃないか」
里志「いくらでも待つよ」
奉太郎「さいで」
里志に片方のコップを手渡し、俺はベッドに腰を掛けた。
奉太郎「それで、本題だが……」
奉太郎「里志も大体の見当は付いているだろ」
奉太郎「なら話は早いな、千反田の事だ」
里志「僕が提案できる事なんて大した事では無いけど、いいかな」
奉太郎「構わんさ」
俺の言葉を聞き、里志は天井を見ながら口を開いた。
里志「まず、さ」
里志「ホータロー自身は、どうしたいの?」
奉太郎「そりゃ……別れたくは無い」
奉太郎「俺が考える最善は」
奉太郎「千反田の気が……千反田と言うか、千反田の両親のだが」
奉太郎「進学する大学を神山市内にする事にした……それと」
奉太郎「俺が付いて行く、千反田に」
里志「……そうかい」
そう言う里志の顔からは、いつもの笑いは消えている様に見えた。
里志「遅すぎるってのが、正直な感想かな」
奉太郎「そりゃ……そうだろう」
里志がそう言うのも無理は無い、この時期に進学する大学を変える等……無理な話だ。
里志「後者だけどね、それはホータロー自身は望まないんじゃないかなって思うよ」
里志「勿論、千反田さん自身もね」
奉太郎「……ああ」
千反田は最初こそ、自分を連れて遠くに行こうと提案していた。
しかしあれは、駄目だ。
千反田は恐らく、もう決心は付いている。
俺がもし、千反田に付いて行く等言ったら……あいつはどんな顔をするのだろうか。
それが少し、怖かった。
里志「……だね、ホータローの出した案だとそう言う事になるよ」
奉太郎「……もし」
奉太郎「もし、里志が逆の立場だったら……どうすると思う?」
里志「それはつまり、僕がホータローの立場だったらって事かな」
奉太郎「そうだ」
里志「うーん」
口ではそう言っていた物の、里志はあまり考えている様には見えなかった。
里志「無難に別れるって選択肢を選んだら、後が怖そうだね……」
奉太郎「おい、別に相手を伊原で考えろとは言ってないぞ」
里志「はは、冗談だよ」
里志「……質問に質問で返して悪いんだけどさ、ホータローはこのままだとどうなると思う?」
奉太郎「このままだと? そんなの、決まっているだろ」
奉太郎「……別れるしか」
里志「やっぱり、そう思ってるのか」
俺の言葉を途中で切り、里志は口を開く。
里志「何でそうなるのかな?」
奉太郎「何でって、誰が考えてもそうなるだろ」
里志「はは、それは違うよ」
里志「僕だったらね、伝えるよ」
里志「想いをね、ちゃんと伝える」
奉太郎「それは……迷惑だろうが」
里志「何でそうなるのかな?」
奉太郎「千反田はもう、決心が付いているんだ」
奉太郎「なのに、それを揺らがせる事を言ってどうする?」
里志「……はは」
里志「ホータローはさ、おかしいと思わなかったの?」
奉太郎「……何がだ」
里志「今日の事さ」
里志「君はこう思っているんだよね」
里志「千反田さんに自分の気持ちを伝えるのは、千反田さんの決意を折る行為だと」
奉太郎「……そうだ」
里志「でも、君は僕に相談した」
里志「どうすればいいのか、とね」
里志「はは、おかしいと思わない?」
奉太郎「……そうか」
奉太郎「俺が言っている事は、そういう事か」
里志「そうさ、矛盾しているんだよ」
……言われるまで、全く気付かなかった。
里志「去年と同じ事を言うけど、気持ちは伝えた方が良いと思う」
本当に……奇しくも、去年と同じ様になっていた。
俺は、あの時から成長していないのだろうか。
奉太郎「そう、か」
だがそれだけで、良いのだろうか。
千反田に気持ちを伝えるだけで、解決するのだろうか。
何かある筈だ。 何か。
俺は何度も考えた、悩んだ。
今の俺では、どうする事も出来ないと。
……なら、そうなのではないだろうか?
つまり、そう言う事だ。
ああ、何だ……そんな事だったのか。
里志「びっくりさせないでくれよ、いきなり笑うなんて」
奉太郎「すまんすまん、ただ……ちょっとな」
里志「ま、いいさ」
里志はゆっくりと立ち上がり、俺に向けて口を開いた。
里志「それで、答えは出たかな」
奉太郎「まだ、はっきりとは分からない」
奉太郎「だが、後2ヶ月はあるし」
奉太郎「千反田と別れる日までには、出しておく」
奉太郎「……最悪の結果になっても後悔はしたくないしな」
里志「最悪の結果って言うのは、何も起こらない事だろうしね」
里志「少なくとも、この状況なら……だけど」
そう言った里志の顔には、いつも通りの笑顔が出ていた。
奉太郎「もうこんな時間か」
ふと時計に目が行き、時間を確認した。
既に針は夕食時を指している。
里志「本当だ」
里志「思いの他、話し込んでいたみたいだね」
奉太郎「だな」
里志「ん?」
奉太郎「今日、姉貴が家に居るんだが……飯、食って行くか?」
里志「お! 久しぶりのお姉さんのご飯か、頂いてもいいかな?」
奉太郎「構わん、姉貴に伝えてくる」
俺は扉に手を掛け、開いた。
そのまま廊下に出て、閉め掛けた所で一度その手を止める。
奉太郎「……里志、最後に一ついいか」
里志「うん? まだ何かあったのかい」
奉太郎「俺は、去年から成長しているのだろうか」
里志「今更? そんなの分かりきってるじゃないか」
里志「ほら」
そう言いながら、里志は指さす。
俺はその先に、視線を移した。
そこには、先ほど俺と里志が飲んでいた紅茶のカップが二つ、並んでいた。
里志の言いたい事を理解し、俺は苦笑いしながらリビングに居る姉貴の元へと向かって行った。
第33話
おわり